第3話 |
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メリルの髪に似たかつらの長い毛先が、乳首の飾りにひっかかっている。 両の乳首には石の重りがぶらさがっていた。腹はプラスチックの卵で妊婦のように膨れている。卵のひとつが直腸を圧迫し、肛門を押し広げている。 いまにもこぼれ落ちそうだ。 だが、ここは往来だった。天上にはきらびやかなアフリカの星座が光っている。壁のむこうの邸宅にはひとが住まい、いつ誰が出てくるともしれない。 わたしは裸で街中に立っているのだ。犬の首輪をして。尻穴に卵を詰めて。 「さあ」 ディータがそっと背を押す。 わたしはこぼれ落ちそうなものを必死に尻肉ではさみ、よたよた足を前に出した。 (い、イーサン、できない) ギャグのふちから、薄いよだれが滴り落ちる。ふくれた腹に冷たいしずくがつたう。 犬たちは、わたしをしばしば夜の町に連れ出す。金髪のかつらをかぶせ、メリルとして。 以前、アクトーレスに見破られてから少し中断していたが、イーサンは再開した。 わたしがいやがるからだ。恐怖にふるえ、また、はげしく欲情するからだ。 これまでは四つんばいで這うだけだったが、彼は今日はわたしを立たせた。 責め具に飾られた乳首とふくれた腹をさらしたまま、前を見て歩けという。 まともに歩けるものではない。気が遠くなりそうだ。 乳首の飾りは、揺れるごとに胸を叩き、滑稽な姿を意識させる。 肛門にはさまっている卵が、動くごとにずるりと押し出されそうになる。 股をとじて歩くことができない。老人のようにひざをひらいたまま、無様に尻を突き出し、そっと地面を踏んでいる。 (ああ、もう帰らせてくれ) 背後のイーサンが乗馬鞭を軽く尻に触れ、歩けと命じている。 ディータの冷たい青い目がわたしを見張っている。恐怖と恥ずかしさで脳が泡をたてて沸騰しそうだ。 だが、わたしのペニスはなぜか陶然と直立し、はしたなく汁をしたたらせている! 「だめですよ。この石に乗ってて。首が絞まる」 イーサンはわたしを押さえながら、離れた。 「ウウッ、グウッ――」 わたしは必死にやめろ、と訴えていた。ふたりはわたしを公園に置き去りにしようとしていた。 「十分だけ」 イーサンの声は笑っていた。 「買い物してすぐ戻ってきます。それから卵を産ませてあげる。ちゃんとできたらうちに帰りましょう。十分だけですよ」 首縄を調整していたディータも離れた。 彼を追おうと踏み出すと、咽喉から引き戻された。首縄が頭上の木に吊られている。 「ンンッ、グーッ!」 「卵、落とさないで」 イーサンは笑って言った。 「一個でも落ちてたら、朝までここにいてもらいますよ」 ふたりの声は木陰のむこうへ去った。 |
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